沖縄市の中心街・胡屋十字路とコザ十字路の間にある安慶田バス停で下車。バス停西側の信号から南へ向かい、一筋目を左へ曲がると右手に古ぼけた建物が見えてくる。これが中乃湯である。

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非常に特徴的なのだが、本土の銭湯とは違い、番台は表通りに向かっている。ところが、銭湯の主であるおばあ(沖縄では親しみを込めてこう呼んでいる)は表に椅子を出して近所の仲間たちとゆんたく(おしゃべり)中。おばあに270円を払って中へ入る。
中は沖縄の銭湯に典型的なつくりである脱衣場と浴室に仕切りがない構造になっている。また浴室から見渡すことができるためか、ロッカーには鍵がついていない。浴室の両側にはカランが並んでいるのだが、二股のホースで2つの蛇口から出てくる水とお湯が混合されるようになっている。ちなみにこのお湯も温泉のようである。
浴室の真ん中には円形の浴槽が設えられている。手作りと思しきその浴槽は白く塗り固められている。中に入るとかなりお湯の温度が高く、長くつかっていることはできない。実はこの中乃湯、れっきとした温泉銭湯なのである。しかもその温泉はなかなか良質のようで、出たあともなかなか体温が下がらない。おまけに肌もすべすべする。南国と温泉、一見結びつかない取り合わせではあるが、たった270円でこれだけの温泉が楽しめるとは本当にうれしい。なお緑色なのは天然温泉の成分のためなのかと思っていたところ、実はここの記事によると最初の1回だけ入浴剤を入れているそうである。残念。
表へ出たあとで主のおばあと話をする。「お湯の温度はどうだった?」と聞かれたので、「もっとぬるいほうがよかった。」と答えると、「そういってくれれば下げたのに。」との答えが返ってくる。どうやらお客の好みに合わせて温度を調節してくれるようである。そこにいる他のおばあたちともゆんたくを続けているうちに心の中まで和んでくる。