まだ暗い6時ごろに到着。出発してから11時間の道程である。ここでもチップを要求されるが、サンティアゴ・デ・キューバのときと違って、要求というよりも穏やかなお願いのされ方である。辺りには宿からの客引きや宿からの斡旋手数料狙いの連中が多数いるが、サンティアゴ・デ・キューバのときほどは激しくない。すぐに私の名前を書いたボードを持った男性が見つかる。3分ほどで宿に到着。まだ頭のほうは半分眠った状態である。冷えきった夜行バスで熟睡するのはなかなか難しい。この状態で宿探しをしていたら大変なことであっただろう。
この宿もカサを示す三角の印は出していない。中の天井はとても高く、開放感がある。パティオを囲んで台所やシャワーがあり、これまた居心地がよさそうである。上のほうにはまだ熟していないマンゴーの木が見えている。とりあえずシャーを浴び、朝食をいただく。3CUC也。
客室に入ったところ、こちらも大変広い部屋で天井も高く、1人ではもったいないぐらいである。鍵を渡されたのだが、玄関の鍵が入っていない。どうすればいいのかと尋ねたところ、呼んでくれれば開けに行くからとの答え。カサの場合、玄関の鍵も貸してくれるところと、ここのように玄関の鍵は貸してくれないところの両方があるようであり、できれば最初にその点は確認しておいたほうがよい。一般的にキューバ人は宵っ張りとはいえ、やはり夜遅くに玄関の鍵を開けてもらうのは気がひけるものである。
一休みしてから街へ出る。さすがに8時半とあって人影はまばらである。ツアー客は海岸沿いのプラヤ・アンコンのホテルに泊まっている場合が多いため、トリニダーの街へ繰り出してくるのは10時半頃を過ぎてからのようである。静かな街を楽しみたいのなら10時ごろまでが一番よい。

まだ人気もまばらな朝のトリニダー



Plaza Mayorで出会った女子学生たちから写真を撮ってくれと言われて撮った1枚。街角で出会った黒猫。博物館の中から見たトリニダーの街。どれをとってもハバナやサンティアゴ・デ・キューバでは感じられなかったような落ち着きが感じられる。流れる時間も心なしかかなりゆったりしているような気がする。本当は1泊だけでハバナへ戻ろうかとも思っていたのだが、これなら2泊してもよさそうである。
街を歩いていると通りすがりの女性からスペイン語でなにやら声をかけられる。また客引きかと思い適当に相手にしておく。しばらく行くとZerqueraとEmesto Valdesが交わるあたりの建物の中から音楽の生演奏が聞こえてくる。中へ入ると先ほどの女性がいる。調べてみると、この場所の名前はCasa de la Cultura Julio Cueva Diaz。いろいろとこういった音楽の演奏などが随時催されているようである。建物の中には風が流れ、日差しの強い外とは対照的。その風と音楽の優しい心地よさゆえに1時間以上も過ごしてしまう。

再びPlaza Mayorにたどり着くと、目の前に階段が続き、その上になにやら建物があるのに気づく。階段の途中にはオープンバー、一番上にあるのはレストランのようである。ちょっと早い目に昼食をとることにする。他には客はいない。店の名前はCasa de la Musica。夜には音楽演奏などもあるらしいが、この時間はそんなものもなく、従業員たちもおしゃべりに夢中でいたってのんびりした空気が流れている。

上の写真は鶏のグラタンで、キューバで食した料理の中では一番美味しかった。4.5CUC也。右に並ぶのはもちろんモヒート。この強い日差しにはそのミントの香りがぴったり。テーブルの遥か向こうにはプラヤ・アンコンの美しい海も見える。思わずモヒートをもう1杯おかわり。全部で10.5CUC。
一度カサに戻ってシャワーを浴びる。ところが水を流しながらシャワーのスイッチを動かすとちょっと調子がおかしいことに気づく。お湯が出てこずに蒸気だけが出てきて、おまけに焦げ臭い。よく見るとシャワーの出口が真っ赤に光っている。あわててコックを閉めて表へ飛び出す。幸いにも石鹸は使っていない。私の声を聞いて、御主人たちが何事かとやってくるので事情を説明。心配するな、もう1つのシャワーを使ってくれとのことなので、そちらを使うことにする。十分に暑いので水だけでも十分なぐらいである。
シャワーを終えると電気屋さんがシャワーの修理中。実は日本のように離れたところの湯沸かし器などからお湯を給湯する方式ではなく、蛇口の先に電熱線が入った加熱器が付いており、そこで水がお湯に変わるという代物なのである。電圧が220Vの地域ではシャワーを浴びている間に感電死することもあるというすばらしい「文明の利器」である。幸いにもキューバは115V地域なので、感電するまでには至らないのかもしれない。これが修理中のシャワー。

蛇口を開いている間にはシャワー本体のスイッチは動かさないように、シャワーのスイッチを動かす場合には必ず蛇口を閉めてからにしてくれとのこと。皆さん方もくれぐれも御注意を。
シャワーの後は近くのバスターミナルへハバナ行きViazulバスの予約へと向かう。いつこの街を離れるか悩んだ末、やはりあさっての便に決定。隣の乗り場からはプラヤ・アンコン行きのトラックバスも出ている。ただし外国人観光客が乗れるのかどうかはわからない。
一旦両替などのため、新市街地へと移動する。土曜日とあって銀行は閉まっており、CADECAだけが営業中。ここも日本円は両替できない。よく見ると並んでいるほとんどの観光客たちがクレジットカードを手にしており、現金を両替する人たちは少ないようである。中にはキャッシングの際には宿泊先の住所を聞かれることを知らず、あわてて一旦宿へ住所を聞きに戻る者もいる。
その後再びPlaza Mayorから北側にある丘へと向かう。ここには18世紀のスペイン軍病院の一部であるErmita de Nuestra Señora de la candelaria de la Popaの朽ち果てた残骸が残っており、ここからトリニダーやプラヤ・アンコンの海を見渡すことができる。ほとんど人の通らないところではあるのだが、通り道にはアクセサリーを並べて売るものもおり、声をかけられる。果たして本当にこんなところで商売になるのであろうか。

この後スペイン語で夕食はうちでどうだと客引きするされる。とりあえず宿で頼んであるからいらないと言ってはみたものの、その意思も伝わらないようで、かなりしつこく付きまとわれる。最後にチェ・ゲバラが印刷された3MN札を売りつけようとしてきたのだが、その手口は既に耳にしていたため、さっさと追い払ってその場を立ち去る。
その後見かけたのがこのシボレー。アメリカから経済制裁を受ける前に入ってきたに違いないのだろうが、それにしてはあまりにも状態がよさ過ぎる。

宿のすぐ近くのZerqueraにあるMini Super Caracolで水その他を購入。他の店と比べて品揃えがよいようである。キューバはアメリカから経済制裁を受けているわけだが、たしかにアメリカ製品は見当たらない。マヨネーズはカナダ製、ジャムはスペイン製、コカコーラですらメキシコ製といった具合である。その後宿に戻り、あさってハバナへ戻ることを報告。ハバナの宿のほうへも連絡してもらう。
今夜も宿で食事を取る。当たり外れもあるのだろうが、一般的には宿の食事のほうが種類が豊富なような気がする。昼に続いて夜も鶏料理。付け合せには甘くないバナナのフライがついている。これがほくほくしていてけっこういけるのである。その他にも定番のインディカ米に黒豆を煮た物も大量につく。
この日は疲れがたまっていたのか、シャワーも浴びずに床につく。本当は軽く仮眠してからもう一度出て行くつもりだったのただが、再び目が覚めたときにはもう真夜中。やはり玄関の鍵を借りていなかったことがいまいち起きる気力に欠ける結果へとつながったのだろうか。