できれば物価の高い空港につく前に朝食をと思ったのだが、やはり開いている店はあまりない。そのうちに地下鉄の駅に到着。7時過ぎの列車に飛び乗る。終点のKipling駅から空港まではこの時間帯は20分毎の運行とのことで、ちょっと時間がある。とは言っても、改札内に食事をするところなどない。
ちょうど8時に空港へと到着。国際線のチェックインカウンターは長蛇の列であるが、幸いにも私はバンクーバーで国内線から国際線へと乗換え。国内線のカウンターは空いている。
チェックインカウンターと同じ3階にある検査場は混雑しているが、駐車場から直結する2階の検査場は比較的空いているので、こちらが狙い目である。
中へ入ると、あいかわらずTim Hortonsだけ長蛇の列。今日は時間もあることであり、ここに並ぶ。ようやく自分の順番がやってきたが、メニューが上方の端から端まで並んでおり、キャッシャーのところだけでは把握しきれない。おまけにドーナツ類が入ったショーケースも遠くにあるので、何があるのかさえもわからない。日本のファーストフードのようにキャッシャーごとにメニューをまとめたシートがあってもよさそうなものだが、そういう発想はなさそうである。
とりあえずクリームチーズを挟んだベーグルとエクストララージのコーヒーを注文。さすがにこれは入れ物が大きい。なかなか出発の時間までに飲み切れそうもない。そうこうしているうちに搭乗の時間となる。そのままその大きなカップも持ち込む。
機内にはやたら東洋系の顔が目立つ。機内アナウンスでは関空・成田行きのほか、ソウル・香港・上海行きなどへのバンクーバーでの乗り継ぎを詳しく案内しており、そちらへ行く客も多いようである。乗務員にも日本人らしき女性が登場している。おそらく言葉に不慣れな日本人客のためであろう。
国内線はアルコールに加え、枕や毛布、さらに機内食も有料である。それでいてヘッドセットは無料であり、しかも使い捨てとなっている。サンドイッチやカップ麺などを販売しており、とりあえず残ったドルでカップ麺を購入。11時ごろに到着とはいえ、3時間時差がある関係で、トロント時間では14時となるからである。
ほぼ定刻どおりにバンクーバーへ到着。1時間しかないが、一旦制限エリアから出る。先日に見つけたA&Wへ行くためである。品物が出てくるのを待っていると、後ろでじっと見ている日本人の御夫婦が。声をかけると、ちょうど日本から着いたばかりだそうで、トロント行きの出発を待つところ。出発までには時間がある上に、国内線では機内食が有料のため、ここで食べようかどうか思案中らしい。A&Wは日本では沖縄しかない上にけっこう美味しい、とお薦めしたのだが、当の御本人たちは隣の日本食が気になる様子。日本から到着したばかりにもかかわらず、日本食が食べたいという気持ちはいまいち理解できない。
再び検査を受けて搭乗口へと向かう。ところが搭乗口らしきあたりに座ると、周りの顔ぶれはどう見ても広東人にしか見えない。よく見るとディスプレイには「香港行き」の文字が。あわてて隣の関空行きゲートへと移動。ゲート前の売店で持ち合わせのカナダドルを使い切る。
定刻どおりの12時に出発。幸いにも今回は免税品店あたりでぎりぎりまで粘り、出発を遅らせて他の乗客にまで迷惑を掛けてしまう愚か者はいなかったようである。
出発から1時間半ほどして機内食が出される。カナダ人乗務員からは「Chiken or pilaf?」と聞かれたため、鶏料理にしたのだか、後から隣の列を回っている日本人乗務員からは「鶏肉と山菜御飯がございますが」の声が聞こえてくる。えぇ〜、聞いてないよ〜、あのねぇ〜、山菜御飯はピラフじゃないんですよ〜、お願いですから、カナダ人の乗務員にもその辺は詳しく説明しておいてくださいよ〜、山菜御飯とわかっていればそっちを選んでましたよ〜。まあとにかくいまさら愚痴っても仕方がない。
食事が終わるともう日本時間の6時半頃。これから朝というときに寝てしまうと時差ぼけが激しくなりそうな気もするが、11時間近い飛行時間では寝ないわけにはいかない。それにしてもいまどきパーソナルビデオすらないこの機材ではスクリーンが見づらい。
日本時間の12時半頃に2回目の機内食が出される。こちらも2種類から選ぶことができる。さすがに昼間からお酒を飲む人はいないようである。
やがて日本上空に差し掛かる。右手には日本アルプスが見えてくる。カナダ人の団体客たちから口々に「美しい」の声が上がってくる。確かに日本ほど観光資源に恵まれている国も少ないのである。紀伊半島沖から淡路島上空を通り、一路関空を目指す。明石海峡大橋を左手に見ながら、大きく右へ旋回する。北側から滑走路へ進入。
ほぼ定刻どおりの15時ごろに到着。入国審査を済ませ、預けている荷物もないことから、さっさと税関検査へと向かう。多数の国のはんこのおかげで検査が手間取るかと思ったが、スムースに終了。いよいよ旅の終わりである。
多くの人たちの好意的な視線と一部の者からの不快で嫉妬と敵意に満ちた目。でも全般的に見れば温かい人たちが多かったのは紛れもない事実である。直行便の飛ぶカナダやヨーロッパからは多くのリピーター客をひきつけるキューバ。一週間程度では堪能しきれない魅力がここにはある。