かけうどん一杯200円のというまるで立ち食いうどん並みの安さでありながら、自家製麺で歯ごたえのある関西風の麺と昆布などからとったしっかりとした出汁でその味には定評があり、また店の中も昔ながらの懐かしい雰囲気が漂う居心地のいいお店であった。私が知っているだけでも、20年近くかけうどん200円という値段が続いていたはずである。
私はうどんしか食べたことがなかったのだが、他にもそばやにゅうめんもあり、そばもうどん並みの太い麺だったそうで、今になって食べておかなかったことを後悔している。
本当にたまにしか行かない店ではあったが、たまたまあるところで閉店されることを耳にし、今回お伺いした次第である。今となってはもっとまめに訪れていればと悔やまれる。
庶民の味守り92年 歴史に幕 新開地の「びっくりうどん」(神戸新聞)
娯楽の街・新開地の老舗うどん店「びっくりうどん」(兵庫区水木通一)が、店主の高齢化と後継ぎ不在のため九十二年の歴史に幕を閉じた。あっさりした庶民的な味や、飾らない店の雰囲気が、映画や芝居を見に来た人らに親しまれてきた。最後の営業日となった十一日も、閉店を惜しむなじみの客が続々と訪れ、“最後の一杯”を味わった。
びっくりうどんは一九一四(大正三)年、劇場「聚楽館」の横に創業。利尻コンブやウルメ、サバなどから丁寧にとった関西風のだし、コシと歯ごたえのある太めんが手ごろな値段で味わえることから、地元住民や娯楽を求めて新開地を訪れた客の人気を集めてきた。
戦災を乗り越えたが、阪神・淡路大震災では店舗が半壊。製めんの機械が壊れ、水道やガスも寸断。一時は廃業も覚悟したが、常連客らの励ましもあり、約四カ月後に再オープンした。
だが、四代目店主の阿部忠志さん(65)の体力が次第に衰える。毎朝七時から調理場に入るが、立ったままめんを湯がく作業が腰にこたえるようになった。後継ぎもおらず、昨年秋に店をたたむ決意をした。
十一日は最後の営業日。昔なじみの客が阿部さんや店員に「今までありがとう」「元気でな」「締めくくりやな、頑張れよ」と声をかける。普段の二倍仕込んだうどんは、名残を惜しむ間もなく閉店時間の一時間半前までに売り切れた。
五十年来の常連という同区内の男性(74)は、大きな油揚げが二枚入った人気のきつねうどんを注文。「気軽に話せるざっくばらんな雰囲気が大好きだった。これが最後のうどんか。さびしいな」
「一週間ほど前からなじみのお客さんが次々に訪れてくれて、涙が出そうだった」と妻の綾子さん(58)。阿部さんは「力いっぱいやってきて肩の荷が下りたという感じ。今は、支えてくれた人たちに『ありがとう』という言葉しか浮かばない」としみじみ話した。





