さしずめ韓国で言えば1988年のソウルオリンピックがその年に当たるのであろう。それから16年も経った2004年4月1日にKTXは開業した。にもかかわらず、韓国は自主開発の技術ではなくフランスからの輸入技術、しかもわざわざ一世代前の旧型の技術を提供してもらい、開通させたわけである。



左からKTX普通室・普通室座席・普通室グループ席
すぐ隣には韓国同様トンネルの多い地形を走らせている日本の新幹線という優れた技術があるにもかかわらず、あえて自国と違いトンネルのない平野を走り抜けるTGVの技術を導入したのである。もちろん日本への国民感情という、技術的問題とは全く違った次元の判断からである。
このあたりに韓国人のすばらしさを感じ取ることができる。大変な資金と開発の手間がかかる自前の技術開発を放棄することによって面倒な手間を省くという合理性、あえて自分の国土には適さない技術を導入することによって生じてくる様々な問題にあえて立ち向かおうとする勇猛果敢さ、そしてそのあと問題が起きた際に自分たちで問題を解決しようとせず、結局技術を導入しなかったJRに対して技術援助を要求し、しかも無償での提供を要求してくるという大胆さ。どれもわれわれ日本人には持ちえない才能である。
正直言って彼らがうらやましく思えてくる。私なら契約を結ばなかった業者に対してとても技術の無償提供を要求するなどという大胆なことなんて考えようとは思わない。われわれ日本人もこの韓国人の大胆さは見習わなければならないだろう。
というわけで、最高時速300kmといっても、実際に300km出るのはほんの一部分だけである。通常車内モニターにはニュースなどが流されているのだが、加速しているときだけは誇らしげに速度が一緒に表示されている。
特室のほうは普通室より4割高とあって、さすがにゆったりとしている。しかしながら1ランク下のセマウルの普通室の方がゆったりとしているのはいかがなものだろう。


特室と特室座席
それにしても目立つのは車内で電話を掛ける人々。他にも書いたとおり、韓国人には自分の欲求に対して非常に忠実な人が多い。自分が掛けたいと思ったときに掛けたいところで掛けるのである。その奔放さには頭が下がる。特に特室よりも普通室の乗客にその傾向が強いようである。
そういえば私の後ろに座っていた乗客の電話もしきりに着信音が鳴っており、延々と会話を続ける。まわりの乗客など気にする様子もない。この豪快さこそが韓国人のすばらしさであろう。
今回は運行を開始して2年以上たってから初めてのKTX乗車である。というのも、試験運転中から在来線乗り入れ部分でお年寄りの死亡事故があったり、営業開始してまもなくに車内の設備で感電死した乗務員がいたり、あるいは平野部を突っ走るフランスTGVの技術を無理やり導入したため、高速でトンネルに突入した際に起きる衝撃が克服できておらず、トンネル部分では減速しているなどろくでもない情報ばかりが耳に入っていたからである。自分が乗った列車が事故を起こせばたまったものではない。本当に韓国人はその辺に関してはケンチャナヨである。
幸いKRパスを持っていると特室料金が半額になるため、全行程特室に乗車することになった。念のために普通室ものぞいてみると、これがかなり狭い。一つ下のクラスになってしまったセマウル号ののびのびとしたシートとは雲泥の差がある。おまけにシートは回転させることができず、方向は固定である。
ちなみに特室乗客にはいろいろとサービスがある。ミネラルウォーター・缶コーヒー・かんたんなお菓子類・アイマスク・英字新聞を含む各種の新聞・車内放送用のイヤホン(一般室ではW1500)などが無料で提供される。デッキ部分に置かれているため、自分で取りに行くことになる。
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