島の北側にある浜には私が到着した日の賑わいが戻ってきている。水の中に入っているものもいる。東屋の中で三線を爪弾くものもいる。ただ単に泡盛を飲むだけのものもいる。ベンチの上で昼寝をするものもいる。それぞれがそれぞれのやり方でこの海を楽しんでいる。この浜を離れ、南側の浜へと移動する。
途中土産物屋へと立ち寄る。浜から集落へ移動する途中にあるこの店からは眼下に東シナ海が広がる。お店を経営するご夫婦は二人とも内地の出身であり、初めて来たころはまだ高速船も就航しておらず、石垣からかなり時間をかけて島へとたどり着いたらしい。みやげ物といってもありきたりのまんじゅうやせんべいなんて物はなく(そんな日持ちのしないものはおけるはずもない)、ご夫婦がデザインしたTシャツやアクセサリーなど本当にここでしか買えない物ばかりである。奥さんは大阪・泉州から移住して20年以上になるのだが、相変わらず泉州弁が抜けない。ご主人はご主人で夜道であったら身構えしてしまいそうな強面の面構えである。でも気は優しい。
土産物屋を後にして南側の浜へと向かう。北側の浜と違い、南側へ出る道はちょっとわかりにくくなっている。藪の中の獣道のようなところをかきわけていくと、急に目の前に外洋が広がる。もうその先はフィリピンである。そういうわけで、ここだけはピークシーズンでも人気が少ない。浜にたどり着くと「主役」の二人が結婚式の際に使う飾り付けを作成中である。貝や白砂を散りばめ、いかにも沖縄の離島といった雰囲気をうまく表現していく。どんなにお金のかかった飾りつけよりその輝きは美しいはずである。
島の中央にあるなじみの食堂へと移動。屋外にテーブルを並べたこのお店は、もちろん雨天のときは休業である。かつては大阪で料理人をしていたというその腕はこの島でも健在である。特にタコライスやてびちなど何を頼んでもあたりはずれがない。さすがの陽気だけにビールを頼むものもいる。
食堂から宿へと戻り一休み。とは言ってもまだみんな飲み続けてはいるのだが。ラジオから流れてくる沖縄民謡が心地よい。昨年の4月1日にようやく那覇にある民放AMラジオ局の中継局が八重山に完成し、ここ八重山でも民放ラジオを楽しむことができるようになったのである。ひたすらゆったりと流れ続ける時間を楽しむ。
いつものとおりの夕食。いつものとおりの料理の解説。いつものとおりの天気予報視聴。次の日もこの好天は続きそうである。もちろん夕食時にもあの泡盛。そして夕食後もひたすら飲み続ける。